金曜の米国株式市場は大幅下落。トランプ前大統領がEUおよびAppleを名指しで批判し、新たな関税措置を示唆したことがリスクオフを招いた。ダウ平均は250ドル超下落、S&P 500は4営業日続落、ナスダックは1%の下げを記録。
同氏はTruth Social上で、iPhoneの海外製造に対し25%の関税を提案し、EU製品に対しては最大50%の追加関税を課す可能性に言及。これにより、マーケットは年初来の上昇基調を失速させ、大型株やテックセクターを中心に広範な売りが波及した。
一連の発言は、米中貿易戦争の再来を想起させ、投資家心理を冷やす要因に。先行き不透明感が再浮上し、今後の市場見通しおよびポジショニングに見直しを迫る局面となっている。
主なポイント:
米株、通商レトリック再燃で全面安 ─ トランプ発言が波紋
米国株は主要3指数そろって下落。通商政策を巡る懸念が再燃し、投資家心理が悪化。
ダウ平均、週間で4回目の下落
ダウ工業株30種平均は前日比256.02ポイント(-0.61%)安の41,603.07で引けた。ドナルド・トランプ前大統領による新たな貿易関税の可能性を示唆する発言が嫌気され、今週に入り4回目の下落。週間ベースでは2%を超える下落となっている。
S&P500、年初来パフォーマンスが再びマイナス圏へ
S&P 500指数は0.67%安の5,802.82で終了。これで4営業日続落となり、年初来の累積リターンも再びマイナスに転落。広範なセクターに売りが波及した。
ナスダック、Apple主導で1%安
ナスダック総合指数は1.0%安の18,737.21。Apple株が3%下落し、指数全体を押し下げた。トランプ氏が米国外で製造されたiPhoneに対し25%の関税を課す可能性に言及したことが引き金。製造拠点の海外依存度が高いテクノロジー関連株が特に大きな影響を受けた。
欧州株、関税ショックと債券買いで全面安 ─ トランプ発言が圧力に
トランプ前米大統領によるEU製品への包括的50%関税の提案を受け、欧州株式市場は下押し圧力を受けた。リスク回避の流れが強まり、債券市場では利回りが大きく低下。
主要株価指数が軒並み下落
フランスのCAC 40は1.65%安、ドイツのDAXは1.54%安、イタリアのFTSE MIBは1.94%下落。欧州全体を代表するStoxx Europe 600指数は1.00%の下げとなった。一方、英国FTSE 100は小売関連の底堅さに支えられ、週次ベースで0.38%上昇し、相対的な耐性を見せた。
ユーロ圏債券市場、利回り低下が加速
リスクオフの動きにより、安全資産とされる国債への需要が高まり、債券利回りは全面的に低下。ドイツ10年債は8ベーシスポイント低下し2.56%、フランスおよびイタリアの10年債利回りもそれぞれ5ベーシスポイント下落。スイス債は12ベーシスポイントの大幅低下を記録。
経済指標はまちまち
ドイツの第1四半期GDPは前期比+0.4%へと上方修正され、2022年以来の力強い成長を示した。一方、英国の4月小売売上高は前月比+1.2%と予想を上回り、天候要因と家計の消費意欲の高さが寄与。これで4か月連続のプラスとなった。
アジア市場まちまち ─ インフレ乖離と米中外交の綱引きが要因
金曜日のアジア太平洋市場は、米中高官による電話会談を受けた外交安定への期待と、地域ごとのインフレデータのばらつきが交錯し、方向感に欠ける展開となった。
日本市場はインフレ加速を好感して上昇
日経平均株価は0.47%高、TOPIXは0.68%上昇。3.5%という予想を上回る基調インフレ率が支援材料となった。
韓国・中国・香港は横ばい圏
韓国のKOSPIはほぼ変わらず。生産者物価の鈍化が下支え要因に。香港ハンセン指数および中国のCSI 300も方向感に欠け、横ばいで推移。
豪州・シンガポールは底堅く推移
オーストラリアASX200は0.15%上昇。シンガポールの基調インフレ率は前年同月比0.7%上昇し、市場予想を上回った。
外交安定感とともに残る構造リスク
米中対話再開の動きが市場センチメントを一定程度安定させたものの、関税問題とインフレ動向の地域格差がリスク要因として残る。
原油、供給懸念を背景に週間で反落 ─ OPEC+の動向が焦点に
ブレント原油は0.82%高の64.97ドル、WTIは0.80%高の61.69ドルで週末を迎えたが、週間では両指標とも1%超の下落となった。
市場はOPEC+が7月に日量41.1万バレルの増産を見込んでおり、報道では同盟が10月までに自主減産220万バレル/日を完全解除する可能性が示唆されている。
米国債利回り、週末にかけて軟化 ─ 関税リスクによる逃避需要
10年債利回りは4.509%へと4bp低下、30年債利回りも5.031%まで下落。トランプ前大統領の関税発言がリスク回避の動きを促し、安全資産への資金流入が観測された。
週初は財政赤字拡大への懸念から長期債利回りが上昇していたが、週末にかけては一転して債券買いが優勢となった。
住宅市場は予想を上回る回復、労働市場はミスマッチの兆し
4月の新築住宅販売件数は季節調整済み年率換算で743,000戸を記録し、前月比+10.9%の大幅な伸びとなった。2022年2月以来の高水準であり、価格調整を通じて需要が刺激された格好だ。中央値販売価格は前年比で約2%下落し、407,200ドル。建設業者が価格を引き下げ、販売促進に動いていることが背景にある。
ただし、在庫水準は依然として高く、住宅ローン金利の上昇が引き続き逆風要因として作用。金利の抑制なき環境では、反発の持続性には慎重な見方も必要となる。
一方、労働市場では回復の勢いにやや陰りが見られる。5月17日までの週の新規失業保険申請件数は227,000件で、前週比2,000件の減少。市場予想(230,000件)を若干下回った。
だが、継続受給者数は36,000件増加し、190.3万人に達した。これは、職を失った労働者の再就職が容易でない状況を示唆しており、需給のミスマッチや一部産業での雇用吸収力の鈍化が背景と見られる。
本日の外国為替市場:

EUR/USD:1.1400に接近、モメンタムは依然強含み
EUR/USDは金曜に0.74%上昇し、1.1362で週を終えた。1.1150付近のテクニカルサポートからの反発が鮮明となり、3営業日連続の陽線を形成。価格は直近高値圏で引けており、1.1400の抵抗水準への接近が続く。100日SMA(1.0874)および200日SMA(1.0801)は上向きを維持しており、中長期的な上昇トレンドを支持。1.1400を明確に上抜けた場合、次のターゲットは1.1550(3月高値)。下値支持は1.1250および50日SMAが機能。
GBP/USD:1.3500の節目を上抜け、2025年高値を更新
GBP/USDは0.86%上昇し、1.3533で取引を終了。1.3500の心理的レジスタンスを突破し、年初来高値を更新。4月以降のレンジ圏を上放れ、テクニカルには強気継続を示唆。50日SMAは1.3165で上昇基調を維持しており、100日・200日SMA(ともに1.28台)も下方に位置していることから、下値リスクは限定的。上値目標は1.3700。調整局面では、1.3350および1.3200–1.3165ゾーンが押し目買いの関心を集めやすい。
USD/CAD:サポート割れで構造的転換の兆し
USD/CADは0.95%下落し、1.3724で週を終了。1.3800のキーレベルを明確に割り込み、10月から続いた上昇構造の崩壊を示唆。今週の下落は4月初旬以来最大であり、トレンドライン割れと合わせて地合いは弱含み。50日SMA(1.4016)および100日SMA(1.4181)はともに下向きで、モメンタムは後退。200日SMA(1.3629)の攻防が注目される水準で、これを下回ると1.3600〜1.3450への下値余地が拡大する。上値抵抗は1.3800および1.3900。
AUD/USD:200日線突破、年初来高値を更新
AUD/USDは1.35%の上昇で0.6495まで上昇し、3月以来の高値を記録。4日続伸に加え、200日SMA(0.6452)を明確に上回って引けたことで、テクニカル面からは上昇トレンドへの転換が視野に入る。50日SMA(0.6335)と100日SMA(0.6308)が下値支持として機能。セッション高値付近でのクローズは買い意欲の持続を示唆。0.6500の定着が確認されれば、次の上値ターゲットは0.6600および0.6650。サポートは0.6400および0.6340。
ゴールド:3,361ドルへ急騰、テクニカル構造は強気優位を維持
ゴールドは金曜日の取引で2.01%上昇し、3,361ドルで週を終えた。テクニカル的に重かった3,350ドルのレジスタンスを明確に上抜けたことで、価格は5月レンジの上限帯に回帰し、上昇バイアスが一段と強化されている。
直近数日間は50日移動平均線(SMA)3,199ドル前後での持ち合いが続いていたが、この調整期間が上放れの起点となった。上位時間軸では、**100日SMA(3,008ドル)および200日SMA(2,811ドル)**の上に安定的に位置しており、中長期的な上昇トレンドの継続性を裏付けている。
構造的には、高値圏での定着と底値の切り上げが確認されており、ゴールドは依然として強気のパターン内で推移している。上方向では3,400ドルが次なる節目であり、これをブレイクすれば、4月高値水準である3,500ドル近辺が次のターゲットとなる可能性が高い。
一方、下値サポートとしては3,300ドルと3,250ドルが機能しており、特に50日SMAがテクニカルな下支えを提供している。現水準での押し目は、トレンドフォロー型戦略における再エントリーポイントとして注目されやすい構成となっている。
トランプ前大統領による新たな関税示唆が引き金となり、金曜日の市場は急反転。投資家心理がいかに脆く、変化が急速であるかを再認識させる展開となった。ここ数週間にわたって継続していたリスク資産への資金流入は、貿易摩擦緩和への期待を背景にしたものであったが、今回の発言がもたらしたボラティリティの再燃は、その上昇基調の持続可能性に疑念を投げかけている。
市場参加者の一部は、今回の発言を選挙戦を見据えた政治的プロパガンダと捉えているものの、株式、債券、為替市場全体におけるリスク回避の動きは、センチメントの変調を明確に示している。特に安全資産へのフローの加速やハイベータ資産の利食い売りが強まった点は、投資家が再び外部ショックに対して脆弱なポジションを取っていることを示唆している。
貿易問題が再びグローバルな市場テーマとして浮上する中、市場の焦点は次週のOPEC+会合および主要経済指標へと移る。政策スタンス、需給見通し、インフレ圧力といった要素が複雑に交錯する局面において、地政学とマクロ経済の共振が市場に与えるインパクトが注視されることになる。






